来談者中心療法には、提唱者のカール・ロジャーズによる「ロジャーズの中核三条件」というものがある。
ロジャーズの中核三条件
・一致
・無条件の積極的関心
・共感的理解
いわゆる「態度」と言われるものがそれである。
傾聴技法の3つの「態度」の元ネタ
傾聴技法の3つの「態度」の元ネタはカール・ロジャーズが発表した論文「治療的パーソナリティ変化のための必要十分条件」(Rogers1957)6条件というものである。傾聴技法の「態度」は、この中の第3・4・5条件を指している。
6条件自体が素晴らしいので、掲載しておく。
治療的パーソナリティ変化のための必要十分条件(Rogers1957)
①クライエントとカウンセラーが心理的な接触を持っていること
②クライエントは、不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安定な状態にあること
③カウンセラーは、その関係の中で一致しており、統合していること
④カウンセラーは、クライエントに対して無条件の積極的関心を体験していること
⑤カウンセラーは、クライアントの内定照合枠に対する共感的理解を体験しており、この体験をクライエントに伝えようと努めていること
⑥カウンセラーの体験している共感的理解と無条件の積極的関心が最低限度クライエントに伝わっていること
上記のうちの③〜⑤が、特にカウンセラーの「態度」として必要であるものとしている。
「一致」について
カウンセラーはクライエントの話を聴き、カウンセリングの中での体験的な気づきを正確に意識化をし、クライエントに「伝える」。カウンセラーの態度がうわべだけでなく、ありのままの姿を示すことにある。
そして、この「一致」というものは、カウンセラーとクライアントの「関係の中」でということ。「自己一致」と記しているものが多いが、カウンセラーだけに焦点を当ててしまいやすく勘違いしてやすいため、ただ「一致」としている。カウンセラーは生活している間、ずっと一致していなければならないという、悟りを開いた人のようにする必要はない。
「伝える」については、取捨選択ができる。伝えないことがあっても良い。そして、伝える場合はしっかりと吟味が必要だ。
このような「関係の中」での一致によって、カウンセラーとクライエントの信頼関係が起き、クライエントが自分自身の中の真の姿に向かっていくことができる。
「無条件の積極的関心」について
日本語訳として数種類の表記があり、「無条件の肯定的配慮」という表現をされることもある。「肯定的」という言葉により、クライエントを「否定せずに肯定することだ」と勘違いが入る恐れもあるので、「積極的」という表現で考えた方が良さそうだ。
否定も肯定もせず、カウンセラーの価値観や見方で評価をしないこと。中立的でいることを心がける。その上で、クライエントに積極的に関心を持つのだ。
すると、クライエントは「ここではなんでも話せる心理的に安心・安全な場所」という気持ちが生まれやすくなる。
「共感的理解」について
普段よく使われる「共感」というだけでは物足りない感がある。カウンセラーもクライエントも100%同じ人間ではないし、育って来た環境も違う。同じ言葉であっても、頭の中のイメージは異なっていることが通常である。
ここで大切なのは、クライエントを「理解しようとする姿勢」が最も大事だということ。クライエントの願い、見ている世界、考えや行動、どのように感じているかなどだ。
クライエントは一人ではなく、共感的理解を示してくれるカウンセラーがしっかりいるということはもちろん、自己理解の探求に入りやすくなる。
まとめ
傾聴技法の3つとしての「態度」
・カウンセラーの態度がうわべだけでなく、ありのままの姿を示す(一致)
・カウンセラー自身の価値観で評価せずに関心を示す(無条件の積極的関心)
・クライエントの見ている世界をそのまま理解しようとする姿勢(共感的理解)
をしっかり行ない、カウンセリングの早い段階で、より良い関係を築くことが肝要で近道となる。
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